「明日がテストだけど全然できてない!」と焦って一夜漬け、さらには徹夜してテストを受けたなんてことがある人も多いかもしれません。いい結果が出たかどうかはさておき。実は徹夜するよりも寝たほうが記憶が定着するのです。なぜって?その理由をお伝えします。
制限時間を決めると集中力が高まる
制限時間があると脳はその制限時間に向かって背水の陣、もう逃げ場はないと覚悟した上で取り組むようになります。
制限時間を設けることで憶えることに向かって脳の機能が集中的に活動を開始するのです。
一夜漬けの勉強が能率的に運ぶのも、脳が背水の陣であることをはっきり意識し、集中力が高まるからです。
このことを利用し、勉強で能率が上がらないときは、わざと時計をにらんで秒読みをはじめると、自分に気合を入れるのに役立つのです。
休みながら記憶することが効果的
一夜漬けの勉強では、時間に追われているせいか一時も無駄にしないようにがんばるものです。
こうしたやり方は、記憶の理論では集中記憶法と呼ばれていますが、実は、がんばりにくらべてあまり効率が上がりません。
そうやってがんばるよりは、ときどき休息を入れてから憶える分散記憶法のほうが、効果的なのです。
これは、ヨストの法則と呼ばれるもので、次のような実験で効果のほどが確かめられています。
①ある人間に一定の材料を1日10回ずつ3日間にわたって合計30回憶えさせます。
終了後、24日後に同じ材料をふたたび全部憶え直すのに何日かかるかを調べるのです。
②次に、しばらく日時をおいて同じ人に同性質の材料を1日に続けて30回反復学習させて、さらに24日後に、再び憶え直すのにかかる日数を調べてみました。
その結果、①のほうが能率がよいことがわかりました。
再学習のとき、前者のやり方では後者の半分の時間量で憶えてしまったのです。
一夜漬けではそんなにゆっくりもできませんが、ぶっ続けでやるよりも、少しでも休息をはさむと、忘れにくくなると同時にその後の記憶量が増えるのです。
少しでも眠ったほうが記憶は保持できる
十分に準備のできていない試験の前夜は、わずかの時間も惜しく思われ、眠るのが罪悪であるかのように思えることさえあります。
1ページでも多く憶えておこうと、夜が白々と明けるまで机に向かってがんばり、ついには眠る時間がなくなって、朝食もそこそこに出かけていくようなことになります。
しかし、徹夜は記憶には悪い結果を及ぼします。
せっかく憶えたことが、一睡もしないためにボロボロと頭の中からこぼれ落ち、忘れ去られていくことが、心理学の実験によって明らかになっています。
この実験は、ジェンキンスとダレンバックの実験と呼ばれ、次のような結果が出ています。
学習して、すぐに眠った場合は、2時間までは記憶が減少するが、その後は、減ることはない。
しかし、眠らずにいた場合は、記憶は減少し続け、8時間経過後でも急激な減少が見られる。
勉強をした後に何も考えずに眠ってしまえば、睡眠に入って最初の2時間は記憶が減少しますが、その後は眠りという厚い壁に守られて記憶が保持され、目覚めたときにも、約80%の記憶が稼動可能な状態なのです。
これには、体制化という眠りが記憶痕跡をある程度整理し定着させる作用があることも寄与しています。
逆に、まったく眠らないと記憶は減り続けていくだけになるのです。
つまり、目覚めていれば、どんなに静かな部屋にいても、外部からさまざまな刺激が五感を通して、眼に入ってきます。
これらの刺激に基づく心的な活動が、前に蓄積された記憶を抑えこんでしまうのです。
これを心理学では抑制効果と言われていますが、さまざまの刺激のなかに記憶が埋没して、ついには忘れ去られるのです。
したがって、夜遅くまでの勉強は、その効率をよく考えてしないと、せっかく大量に記憶したのに、まるで憶えていないということになりかねません。
たとえば、10項目を憶えても、一睡もしないために憶えた内容が2項目になってしまうよりは、たとえその半分の時間で5項目しか記憶できなくても、眠ったために4項目だけ保持されていたとしたら、はるかに効率のいい一夜漬けということになります。
まとめ
・制限時間があると脳は逃げ場はないと覚悟した上で取り組むので集中力が高まる
・少しでも休息することで忘れにくくなると同時にその後の記憶量が増える
・勉強した後に眠ることで記憶が約80%は目覚め後も保持される
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