女性には特有の睡眠の必要性とパターンがあり、それは生涯を通じて変化していく可能性があります。睡眠の質と量は、ホルモンや健康状態、家庭やコミュニティでの性別による役割分担などに影響されます。女性は男性よりも若干睡眠時間が長い傾向にありますが、質の良い睡眠が取れていない可能性があるとも言われています。
月経周期や妊娠、更年期によるホルモンの変化は、睡眠パターンに影響を与え、特定の睡眠障害のリスクを高める可能性があります。女性が睡眠の問題を抱えている場合、男性とは違う症状となることがあります。
女性特有の条件を理解することは、睡眠の問題を特定・管理し、睡眠の質を向上させることができます。
女性に必要な睡眠時間
男女を問わず成人がすっきりした気分で過ごすには、1日7~9時間の睡眠が必要だと言われています。
女性が必要とする睡眠時間は、年齢や妊娠の有無、その他健康状態に関連する要因によって異なる場合があります。例えば、妊娠中の人はより多くの睡眠が必要で、高齢者や閉経後の人はより少ない睡眠で済む傾向があります。
女性特有の睡眠の課題
女性は生涯を通じて睡眠パターンに影響を与える要因としてホルモンがあります。ホルモンの分泌は思春期に変化し、新たな変化が起こる閉経まで毎月変動し続けます。それぞれのライフステージにおいて、ホルモンの変化は睡眠の量と質に乱れを生じさせる可能性があります。
妊娠と睡眠
妊娠すると、睡眠習慣やパターンをはじめ、人の体や日常生活にさまざまな変化が出てきます。妊娠によって睡眠の質が低下し、睡眠時間が減る傾向があります。妊娠3ヶ月から出産後にかけては、眠れなくなることがあります。
第1期と第2期
プロゲステロンのレベルが上がると、睡眠の質に影響することがあります。この時期、多くの人が日中に疲れを感じ、もっと眠りくなります。
妊娠3ヶ月以降
妊娠後期には、睡眠の質がさらに悪くなることがあります。深い眠りや、レム睡眠の量が減ります。胸やけや赤ちゃんの動き、夜におしっこをしたくなる尿意などの妊娠中の不快な症状も睡眠不足につながることがあります。
出産後
新米パパママになると、赤ちゃんの食事や睡眠のスケジュールに慣れるため、睡眠不足になることがよくあります。睡眠不足は産後うつにつながることもあるので、できるだけ睡眠時間を確保するように心がけることが大切です。
女性の睡眠は年齢とともにどう変化するか
女性や月経のある人は、一生のうちに何度もホルモンの分泌が盛んになる時期があります。睡眠の量と質は年齢とともに変化します。若い女性は睡眠の質が最も高くなり、高齢の女性は一晩の睡眠時間が短くなる傾向があります。ホルモンの変化と、睡眠の問題が重なることがあります。
更年期
更年期は生殖年齢が終わるころに起こる過渡期です。月経不順、ほてり、ホルモンの変化などが特徴です。更年期の女性は、睡眠時間が7時間未満になる傾向があります。
更年期障害
月経がある人は、通常55歳までに閉経を迎えます。寝汗、頭痛、ほてり、動悸など、更年期障害の一般的な症状によって睡眠が妨げられることがあります。この年齢では、睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群(RLS)などの睡眠障害のリスクも高くなります。
閉経後
閉経後のプロゲステロンの不足は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のリスク上昇と関連しています。この時期になると、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、目覚めが悪くなったりすることがあります。
睡眠障害は女性に多い
睡眠障害の中には女性に多く見られるものもあり、女性は男性とは異なる睡眠障害の症状に悩まされる傾向があります。
女性は寝つきに問題があり、寝つきや睡眠維持のために薬を服用する傾向があります。また、女性は日中の眠気を伴う睡眠障害になりやすく、QOL(Quality of Life:生活の質)に大きな影響を与える可能性があります。
不眠症と気分障害
女性の約25%が不眠を経験しています。不眠症のリスクは閉経後に増加しますが、これはおそらく加齢に伴うホルモンの変化やその他の要因によるものと考えられます。不眠症は、日中の眠気や日常業務でミスをする、気分の変化などの症状を訴える人が多く、QOLに影響を与える可能性があります。
不眠症はうつ病などの気分障害と密接な関係があり、男性よりも女性に多く発症する傾向があります。不眠症とうつ病を同時に経験することが多いため、一方の症状が先行しているかどうかを判断するのは難しい場合があります。
不眠症とうつ病の両方に対して治療が可能であり、一方の症状をうまく管理することで、もう一方の症状が改善されることがほとんどです。
痛みに関連する睡眠の問題
睡眠不足と慢性の痛みには大いに関係があります。線維筋痛症は女性に多く、60歳以上の約7%が罹患している慢性疼痛疾患です。線維筋痛症の人は、一般的に疲労と質の悪い睡眠を経験します。
痛みの原因となる他の健康状態も、女性の睡眠障害につながることがあります。例えば、妊娠中に続く痛みや不快感は、眠れなくなることがあります。
レストレスレッグス症候群(RLS)
レストレスレッグス症候群は、他の成人と比べて妊娠中の人に多くみられます。レストレスレッグス症候群は睡眠関連運動障害の一種で、睡眠中やその他の休憩時間に貧乏ゆすりのように脚を動かしたくなります。レストレスレッグス症候群の症状は、妊娠期間中に悪化することがありますが、通常は出産後になくなります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に短時間ではあるが気道の虚脱が繰り返されることにより呼吸が乱れる睡眠障害です。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に喉や口の奥の組織が弛緩し、気道を塞ぐことで発症します。
全体として、閉塞性睡眠時無呼吸症候群は男性よりも女性に多くみられます。
女性特有のリスク
気道が狭くなると閉塞性睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まりますが、これは首の脂肪が多いことと関連している可能性があり、女性よりも男性の方が多く発症する問題です。しかし、妊娠中は鼻腔や喉が狭くなるなど、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のリスクを高める様々な変化が起こります。
症状の現れ方
女性は、疲労感や抑うつ感、不眠などの症状になる傾向があります。また、睡眠中のいびきや息苦しさなどの症状を訴える傾向があります。
睡眠障害による影響
睡眠不足になると健康に影響します。特に、睡眠時間が7時間未満の高齢の女性は、日常生活に支障をきたし、生活全体の質にも影響をします。
睡眠障害は慢性化し、他の健康障害を引き起こしたり、悪化させたりする可能性があります。睡眠不足は、多くの病気のリスクを高めます。
糖尿病
十分な睡眠がとれないと、体は血糖値を適切に調整することができません。
心臓の病気
睡眠不足は高血圧や炎症を引き起こし、心臓にダメージを与える可能性があります。
感染症
睡眠は免疫力を高め、風邪やその他の病気を防ぐのに役立ちます。
メンタルヘルス
眠れない夜は、うつ病や不安症を悪化させる可能性があります。
より良い眠りのためのヒント
女性に限らずどんな人でもそうですが、日頃から十分な睡眠をとり、ストレスをできるだけ減らすことが大切です。
生活の変化による睡眠改善する方法
様々な生活の変化を経験する女性にとって、睡眠を改善するための方法を紹介します。
妊娠中
寝る前には、重いものや辛いもの、カフェインなどは避けましょう。また、左向きに寝て、背中に枕を1つ、足の間に枕を1つ、腕を乗せる枕を1つ用意するとより快適に眠れるかもしれません。
更年期障害
睡眠を妨げるほてりを和らげるために、寝室の温度を低く保ち、扇風機や薄手の寝具で涼しくしましょう。寝る前に熱いシャワーやお風呂に入るのは避けましょう。
出産後の育児
赤ちゃんが昼寝をしているときに昼寝をするようにしましょう。なるべく一貫した生活習慣を維持することを心がけましょう。
睡眠衛生を改善する方法
良質な睡眠をとることは、全身の健康を維持するために重要な要素です。睡眠衛生を改善し、より良い睡眠をとるために、人々が日頃からできることがあります。
一貫した生活習慣を維持する
休日も含め、毎日同じ時間に寝起きしましょう。
寝室を快適にする
寝室は、静かで、暗く、落ち着ける場所にし、快適な温度に設定しましょう。
電子機器を使わない
寝室ではテレビやスマートフォン、パソコンなどを使わないようにしましょう。
食事に気を配る
寝る前の大食やアルコール、カフェインなどを控えましょう。
体を動かす
日中に運動することで、夜の寝つきをよくすることができます。
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