オーガニゼーション行動学入門|組織内での人間行動をマスターする

オーガニゼーション行動学入門|組織内での人間行動をマスターする 心理学
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組織内で働く人たちの行動や考え方を理解することは、仕事をスムーズに進めるために必要なスキルです。しかし、組織内での人間行動は、複雑で多様な要因に影響されるため、単純な法則やルールで説明することはできません。そこで、組織内での人間行動を科学的に分析し、組織の効果的な運営と成果を促進するための知識や方法を提供する学問領域があります。それが「オーガニゼーション行動学」です。

  • オーガニゼーション行動学とは、組織内での人間行動を科学的に分析し、組織の効果的な運営と成果を促進するための知識や方法を提供する学問領域
  • オーガニゼーション行動学では、個人の行動とモチベーション、リーダーシップと組織文化、グループのダイナミクス、コミュニケーションと情報フロー、組織変革と変容管理、組織の公平性と正義感などの主要な領域とトピックが研究されている
  • オーガニゼーション行動学は、組織内で働く人たちの行動や考え方を理解することで、仕事をスムーズに進めるために必要なスキル
  • オーガニゼーション行動学を学ぶことで、自分自身や他者のモチベーションを高める方法や効果的なリーダーシップの発揮方法、チームの協力とパフォーマンスの向上方法、組織文化の形成と変革方法、情報の効果的なフローとコミュニケーション方法、公正な組織の維持方法などを身につけることができる

オーガニゼーション行動学とは何か?

オーガニゼーション行動学とは何か?
オーガニゼーション行動学とは何か?

オーガニゼーション行動学とは、「組織内で人々が示す行動や態度についての体系的な学問」です。オーガニゼーション行動学は、「行動科学」と呼ばれる学問分野を基にしています。行動科学とは、人間の心理や行動を科学的に理解しようと試みる学問分野で、心理学、社会心理学、社会学などが含まれます。オーガニゼーション行動学は、これらの分野からさまざまな理論や手法を借用しながら、組織に特化した研究を展開しています。

オーガニゼーション行動学の歴史

オーガニゼーション行動学の起源は、産業革命以後に生まれた「産業心理学」と呼ばれる学問領域に遡ります。産業心理学とは、経済生活の諸問題に対する心理学的な研究をおこなう学問領域で、1880年代から1990年代にかけて発展しました。産業心理学では、労働者の適性や労働条件、採用配置や訓練などが研究されました。

その後、産業心理学はアメリカで発展し、「組織心理学」と呼ばれるようになりました。組織心理学では、労働への動機付けやモラール、人間関係などが研究されました。また、研究対象も個人からグループや組織へと拡大しました。1960年代後半には、「組織行動論」という用語が登場しました。組織行動論では、組織内で起こるさまざまな人間行動に着目し、その背景や影響を探求しました。

現在では、オーガニゼーション行動学は経営学部や商学部などのビジネス系の学部のみならず、他のさまざまな学部でも一般教養科目として取り上げられるほどの重要なテーマとなっています。

オーガニゼーション行動学の主要な領域とトピック

オーガニゼーション行動学の主要な領域とトピック
オーガニゼーション行動学の主要な領域とトピック

オーガニゼーション行動学では、組織内での人間行動を様々な角度から分析します。以下に、オーガニゼーション行動学の主要な領域と関連するトピックをいくつか紹介します。

個人の行動とモチベーション

オーガニゼーション行動学では、個人の行動とモチベーションの関係を研究します。個人のパフォーマンスや意欲、働きがい、仕事へのコミットメントなどが関心の対象です。モチベーション理論の応用や報酬システムの効果なども研究されます。例えば、以下のような理論や手法があります。

マズローの欲求段階説

マズローの欲求段階説は、人間は生理的欲求から自己実現欲求まで5段階の欲求を持ち、低次の欲求が満たされると次の高次の欲求に移行するという説です。

ハーズバーグの二要因説

ハーズバーグの二要因説は、仕事に対する満足感や不満感は、それぞれ異なる要因によって決まるという説です。満足感は仕事そのものに関連する「内発的要因」によって生じ、不満感は仕事以外に関連する「外発的要因」によって生じるとされます。

VIE理論

VIE理論は、人間は自分の努力が報酬に結びつくと考えるときにモチベーションが高まるという説です。報酬に結びつく確率を「期待」、報酬が自分にとって価値があるかどうかを「価値」、努力がパフォーマンスに影響するかどうかを「器用性」と呼びます。

目標管理制度

目標管理制度は、目標を明確に設定し、フィードバックや評価を行うことで、個人やチームのパフォーマンスを向上させる制度です。目標はSMART(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)であることが望ましいとされます。

リーダーシップと組織文化

オーガニゼーション行動学は、リーダーシップの役割やスタイル、組織文化の形成についても研究します。リーダーシップの影響力や効果、組織文化の価値観やノルムの形成、リーダーと部下の関係などが関連します。例えば、以下のような理論や手法があります。

権威型・民主型・放任型リーダーシップ

リーダーが部下に対してどれだけ指示や参加を与えるかによって分類されるリーダーシップスタイルです。権威型は指示を多く与え、部下の自主性を抑えるスタイルです。民主型は部下の意見や参加を求め、共同で決定するスタイルです。放任型は指示をほとんど与えず、部下に自由に任せるスタイルです。

トランスフォーメーショナル・リーダーシップ

リーダーが部下の内発的なモチベーションを高め、共有ビジョンに向かって変革を起こすスタイルです。リーダーはカリスマ性や理想性、刺激性、個別配慮などの特徴を持ちます。

サーバント・リーダーシップ

リーダーが部下のニーズや成長を最優先し、奉仕するスタイルです。リーダーは聴く力や共感力、誠実さ、信頼性などの特徴を持ちます。

組織文化

組織内で共有される価値観や信念、規範、行動様式などの集合的なものです。組織文化は組織のアイデンティティや方向性を決める重要な要素です。組織文化は表層的なものから深層的なものまで階層化されています。

  • 表層的なもの:組織のシンボルや物理的環境、言語や儀礼など目に見えるものです。
  • 中間的なもの:組織のミッションやビジョン、戦略や目標、方針や規則など口に出せるものです。
  • 深層的なもの:組織の基本的な前提や信念、価値観や思考パターンなど意識されにくいものです。

グループのダイナミクス

オーガニゼーション行動学は、集団やチームのダイナミクスを研究します。コミュニケーション、意思決定、役割分担、協力と競争のバランス、トラストなどがグループの成果や協力に与える影響に関心を持ちます。例えば、以下のような理論や手法があります。

グループ開発段階説

グループ開発段階説は、グループが形成されてから解散するまでに経る5つの段階(形成・紛争・統合・機能・解散)を説明する説です。各段階ではグループ内で異なる課題が生じ、それらを解決することでグループが成熟していくとされます。

ベルビンの役割理論

ベルビンの役割理論は、グループ内で個々人が果たす9つの役割(アイデアマン・コーディネーター・シェイパー・評価者・推進者・チームワーカー・実行者・完成者・専門家)を説明する理論です。各役割には強みや弱みがあり、グループのバランスや相性が重要とされます。

チームビルディング

チームビルディングは、グループのパフォーマンスや協力を高めるための活動です。チームビルディングには目的や目標の共有、役割や責任の明確化、コミュニケーションやフィードバックの促進、問題解決や意思決定の改善などが含まれます。

コミュニケーションと情報フロー

オーガニゼーション行動学では、組織内のコミュニケーションの役割と効果について研究します。情報の共有やフロー、コミュニケーションの効果的なスキル、情報の透明性などが関連します。例えば、以下のような理論や手法があります。

コミュニケーションモデル

コミュニケーションモデルは、コミュニケーションのプロセスを表すモデルです。送信者がメッセージを符号化し、媒体を通して受信者に送り、受信者がメッセージを復号化するという基本的な流れがあります。この過程でノイズやフィードバックなどが発生することもあります。

コミュニケーション方向

コミュニケーション方向は、コミュニケーションが組織内でどのように流れるかを表す概念です。上から下へ(上司から部下へ)、下から上へ(部下から上司へ)、水平的(同僚間)、斜め(異なる階層間)などの方向があります。

コミュニケーション障害

コミュニケーション障害は、コミュニケーションがうまくいかない原因となる要因です。言語的障害(言葉の意味や理解が異なる)、心理的障害(感情や態度が影響する)、物理的障害(距離や時間が影響する)、組織的障害(組織構造や規則が影響する)などがあります。

組織変革と変容管理

オーガニゼーション行動学は、組織の変革と変容管理にも焦点を当てます。組織変革のプロセス、変革のリーダーシップ、組織文化の変化、変革の抵抗と対処法などが研究されます。例えば、以下のような理論や手法があります。

レビンの3段階モデル

レビンの3段階モデルは、組織変革を「解凍・移行・凍結」の3段階で表すモデルです。解凍は既存の慣習や価値観を変えることで変革への準備をする段階です。移行は新しい慣習や価値観を学び取り実践する段階です。凍結は新しい慣習や価値観を安定させることで変革を定着させる段階です。

コッターの8段階モデル

コッターの8段階モデルは、組織変革を「緊急性の創出・指導的連合の形成・ビジョンと戦略の策定・ビジョンの伝達・行動の促進・短期的勝利の創出・改善と持続化・新しい文化の確立」の8段階で表すモデルです。各段階では特定のタスクや役割が必要とされます。

ADKARモデル

ADKARモデルは、個人レベルでの変革を「認識・欲求・知識・能力・強化」の5要素で表すモデルです。各要素は変革に対する個人の心理的なプロセスを反映しています。

  • 認識:変革の必要性や理由を理解することです。
  • 欲求:変革に参加する意思や動機を持つことです。
  • 知識:変革に必要な情報やスキルを学ぶことです。
  • 能力:変革に必要な行動や行動を実践することです。
  • 強化:変革に必要な行動や行動を維持するための支援や報酬を受けることです。

変革曲線

組織変革に伴う人々の心理的な反応を表す曲線です。変革に対するショックや否認、怒りや抵抗、探索や受容、コミットメントなどの段階があります。変革管理では、人々が各段階で必要とするサポートやコミュニケーションを提供することが重要です。

組織の公平性と正義感

オーガニゼーション行動学では、組織の公平性や正義感の役割にも注目します。公正な処遇や報酬の公平性、意思決定の透明性、公平なリーダーシップなどが関連します。例えば、以下のような理論や手法があります。

分配的正義

分配的正義は、組織内で分配される報酬や資源が公平かどうかに関する正義感です。人々は自分と他者との比較に基づいて分配的正義を判断します。分配的正義が低いと不満や不信感が生じます。

手続き的正義

手続き的正義は、組織内で行われる意思決定や評価などの手続きが公平かどうかに関する正義感です。人々は手続きが一貫性や中立性、情報量などの基準を満たしているかどうかで手続き的正義を判断します。手続き的正義が高いと分配的正義に対する影響を和らげます。

相互的正義

相互的正義は、組織内でリーダーや上司などが部下や部下などに対して示す態度や行動が公平かどうかに関する正義感です。人々は相互的正義を尊重や信頼、優しさなどの基準で判断します。相互的正義が高いと組織へのコミットメントや忠誠心が高まります。


オーガニゼーション行動学の知識を活用することで、組織は個人のモチベーションを向上させ、効果的なリーダーシップを発展させ、高いパフォーマンスと組織の成果を実現することができます。チームの協力とパフォーマンス、組織文化の形成と変革、情報の効果的なフローとコミュニケーション、公正な組織の維持などが重要な要素となります。

オーガニゼーション行動学の事例

オーガニゼーション行動学の事例
オーガニゼーション行動学の事例

オーガニゼーション行動学の知識は、実際の組織やビジネスにも応用できます。以下に、オーガニゼーション行動学の事例をいくつか紹介します。

グーグル

グーグルは世界最大のインターネット企業ですが、その成功の裏にはオーガニゼーション行動学の知識が活かされています。グーグルは従業員のモチベーションを高めるために、自由度や創造性を重視した働き方や職場環境を提供しています。また、従業員のパフォーマンスや幸福度を測定し、データに基づいて人事や報酬などを改善しています。さらに、従業員同士のコミュニケーションや協力を促進するために、社内の情報共有やフィードバックを積極的に行っています。

スターバックス

スターバックスは世界最大のコーヒー店チェーンですが、その成功の裏にはオーガニゼーション行動学の知識が活かされています。スターバックスは従業員(パートナー)に対して、高いトレーニングや教育を提供し、自分の仕事に誇りや価値を感じられるようにしています。また、従業員に対して、公正な報酬や福利厚生を提供し、意思決定や評価に関与させることで、組織へのコミットメントや忠誠心を高めています。さらに、従業員同士や顧客とのコミュニケーションや関係性を重視し、高いサービス品質や満足度を実現しています。

トヨタ

トヨタは世界最大の自動車メーカーですが、その成功の裏にはオーガニゼーション行動学の知識が活かされています。トヨタは従業員(メンバー)に対して、自分の仕事に責任と権限を持たせることで、自主性や創造性を発揮させています。また、従業員に対して、問題解決や改善のための手法やツールを提供し、チームで協力して学び合うことで、高いパフォーマンスや品質を実現しています。さらに、従業員同士や上司とのコミュニケーションやフィードバックを促進することで、組織文化や価値観を共有し、変革に対応しています。

まとめ

オーガニゼーション行動学は、組織内での人間行動を科学的に分析し、組織の効果的な運営と成果を促進するための知識や方法を提供する学問領域です。オーガニゼーション行動学では、個人の行動とモチベーション、リーダーシップと組織文化、グループのダイナミクス、コミュニケーションと情報フロー、組織変革と変容管理、組織の公平性と正義感などの主要な領域とトピックが研究されます。オーガニゼーション行動学の知識は、実際の組織やビジネスにも応用できます。グーグルやスターバックスやトヨタなどの成功事例がそれを示しています。

オーガニゼーション行動学は、組織内で働く人たちの行動や考え方を理解することで、仕事をスムーズに進めるために必要なスキルです。オーガニゼーション行動学を学ぶことで、自分自身や他者のモチベーションを高める方法や効果的なリーダーシップの発揮方法、チームの協力とパフォーマンスの向上方法、組織文化の形成と変革方法、情報の効果的なフローとコミュニケーション方法、公正な組織の維持方法などを身につけることができます。

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