睡眠は生存と健康のために必要なものです。睡眠は、学習や記憶、免疫システムなど、身体の多くの機能を調整し、回復させます。また、睡眠は気分や脳、心臓、肺などの臓器にも影響します。ですから、睡眠不足がこれらのシステムに悪影響を及ぼし、心身の健康問題につながるのは当然のことです。実際に、片頭痛などの頭痛は睡眠不足に関連する病気のひとつです。
睡眠不足は不眠症とは異なる
睡眠に必要な時間や環境が整っているにもかかわらず、入眠や睡眠維持が困難な不眠症とは異なり、睡眠不足は十分な睡眠を得る機会がない場合に起こります。睡眠機会の減少は、長時間労働や不規則な勤務の職業、薬物乱用、ストレスや不安、睡眠を妨げる薬物や病状など、いくつかの障壁の結果として生じる可能性があります。このような障壁のために十分な睡眠時間を確保できず、睡眠不足に陥る人もいます。
また、睡眠時間は十分に確保できるのに、夜中に頻繁に目が覚めてしまい、十分な安眠が得られない人もいます。睡眠不足は、認知能力や集中力の低下、日中の過度の眠気、気分の変化、記憶や意思決定の障害につながることが分かっています。また、睡眠不足は多くの頭痛の原因となることが研究されています。中でも片頭痛は、朝起きた時に最も多く発症します。
片頭痛とは
片頭痛は、中程度から強いズキズキする痛みや脈打つような痛みが繰り返し起こる頭痛で、頭の片側に集中して起こります。また、吐き気、脱力感、光や音に対する過敏性などの症状もよくみられます。
片頭痛は前兆があるかないかでさらに分類されます。これは、片頭痛の前または最中に起こる、筋力低下、しびれ、視覚障害、視力低下、特定の神経症状などの追加的な症状です。片頭痛は女性の方が男性よりも3倍多く、また、片頭痛の家族歴がある方は、自分も片頭痛を経験する可能性が高いと言われています。
睡眠不足と片頭痛の関係
片頭痛、緊張型頭痛、そしてあまり一般的ではない群発頭痛や低頭痛などの頭痛疾患と睡眠不足は関係しています。特に片頭痛を経験する人は、他の頭痛持ちの人よりも睡眠不足になりやすいと言われています。また、睡眠不足は片頭痛のリスクを高めるだけでなく、片頭痛の重症度や頻度を高めることが分かっています。
睡眠不足が片頭痛を引き起こす理由
睡眠不足と片頭痛には共通の脳内メカニズムがあります。例えば、脳の視床下部(睡眠と覚醒を調節する部分)には、痛みの調節に関与する神経細胞も存在します。視床下部には視交叉上核(SCN)があり、目からの信号を受け取って、私たちの睡眠行動を外の明暗のサイクルに合わせるのを助けています。視交叉上核が損傷すると、日中の睡眠が不規則になり、睡眠と覚醒のサイクルが乱れることがあります。
睡眠に関わる脳のもう一つの重要な部位は松果体です。松果体は、昼と夜の区別を認識すると眠りにつくためのホルモンであるメラトニンを生成しています。メラトニンの低下は、片頭痛や群発性頭痛、頭痛で目覚めることと関連があると言われています。
睡眠過多も片頭痛の原因となる
睡眠不足はもちろんのこと、睡眠過多も片頭痛の引き金となることがあります。安眠は片頭痛の症状が進行している間は緩和されますが、過度に睡眠をとることで問題を悪化させる可能性があります。
また、睡眠不足と片頭痛の関係は双方向性である。つまり、睡眠障害は片頭痛の引き金になりえますが、片頭痛は睡眠に悪影響を及ぼすこともあります。片頭痛は、疲労感や過度の眠気をもたらし、睡眠と覚醒のサイクルを乱す可能性があります。
片頭痛にならないためにできること
片頭痛を治す方法はありませんが、症状を軽減するためにできることはあります。市販の鎮痛剤、コップ1杯の水、または冷たく湿らせた布を額に当てると、症状が緩和されることがあります。他にも睡眠衛生を改善するための方法について紹介しますので参考にしてみてください。
就寝・起床のスケジュールを守る
週末も含め、毎日同じ時間に就寝・起床するようにしましょう。睡眠時間を一定に保つことで、片頭痛の引き金となる睡眠不足や過眠を避けることができます。
寝る前によくないものをとらない
アルコール、ニコチン、カフェインは睡眠の質と安定性を阻害する可能性があります。
リラックスして快適に過ごす
寝る前に読書や瞑想、音楽を聴くなどして、リラックスする時間を持ちましょう。部屋は涼しく快適な温度に保ち、マットレスは十分なサポート力を持つものにしましょう。
電気を消す
ランプや間接照明に加えて、スマートフォン、タブレット、テレビなどの電子機器から発せられる光は、サーカディアンリズムを乱して寝つきが悪くなることがあります。就寝前にこれらの機器の電源を切り、就寝中はなるべく使用しないようにしましょう。
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