新しいチームや組織のリーダーに就任された皆さん、心からお祝い申し上げます!🎉 昇進や異動は、これまでの努力が認められた証であり、期待と同時に、少しの緊張感があることでしょう。この新しい挑戦は、あなたのキャリアにおける最大の成長機会となるはずです。
しかし、リーダーシップの成功は、単なる能力や経験だけでは決まりません。特に就任直後の「最初の90日間」の戦略的な行動が、その後のチームの運命を大きく左右します。この期間は、チームの文化を理解し、信頼関係を築き、成果を出すための基盤を固める、極めて重要な「移行期」です。
本記事は、新しいリーダーが組織を成功に導くための具体的なロードマップを、最新の科学的根拠と豊富な事例に基づいて徹底解説します。誰でもすぐに実践できるよう、わかりやすく価値ある内容でお届けします。
1. 成功の鍵は「最初の90日間」にあり:移行期を乗りこなす戦略

新しいリーダーが直面する最大の課題は、「いかに早く、効果的に新しい役割に移行するか」です。ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ワトキンス教授は、著書『最初の90日間』の中で、この移行期を乗り切るための体系的なアプローチを提唱しています。この90日間は、チームの現状を把握し、上司やメンバーとの信頼関係を築き、自身のリーダーシップスタイルを確立するための戦略的な準備期間と位置づけられます。
1-1. 移行期を成功させる3つのフェーズ
ワトキンス教授の理論に基づき、最初の90日間は以下の3つのフェーズに分けて行動することが推奨されます。
| フェーズ | 期間 | 主要な目標 | 重要な行動 |
|---|---|---|---|
| フェーズ1:学習と吸収 | 最初の30日間 | 状況の徹底的な把握と人間関係の構築 | 上司・ステークホルダーへのヒアリング、チームメンバーとの1on1、データ分析、チームの強み・弱みの特定 |
| フェーズ2:戦略の策定と共有 | 31日目〜60日目 | チームのビジョンと戦略の明確化 | チームの目標設定、初期の成功体験の創出、組織文化への適応と調整 |
| フェーズ3:実行と定着 | 61日目〜90日目 | 早期の成果創出と新しい体制の定着 | 重要な意思決定の実行、コミュニケーションルールの確立、フィードバックサイクルの構築 |
1-2. チーム運営の準備:上司と会社の期待値を明確にする
新しいリーダーとしてまずすべきことは、「チームが会社全体の戦略の中でどのような役割を期待されているのか」を明確にすることです。上司や主要なステークホルダーに対して、以下の質問を投げかけ、期待値のズレを解消しましょう。
- 戦略的適合性: このチームは、会社全体の戦略や主要な目標に対してどのように貢献することが期待されていますか?
- パフォーマンス評価: チームの成功は、どのような指標(KPI)で評価されますか?
- 強みと弱み: チームの現在の強みと、改善が必要な弱みは何だと認識されていますか?
- 上司の期待: 新しい役割において、私に最も期待することは何ですか?
- 人材の状況: チーム内の人材は充実していますか?埋めるべきギャップはどこにありますか?
これらの質問を通じて、あなたはチームの「存在意義(パーパス)」と「成功の定義」を深く理解することができます。この理解こそが、その後のすべての意思決定の土台となります。
2. 信頼関係構築の科学:1on1と心理的安全性

新しいリーダーにとって、チームメンバーとの信頼関係の構築は、何よりも優先すべき課題です。信頼は、チームのパフォーマンスと直結する「心理的安全性」の基盤となります。
2-1. 信頼を築く「アクティブ・リスニング」の力
新任リーダーが自分の経歴を長々と語るのは逆効果です。メンバーはあなたの過去の業績よりも、「このリーダーは自分たちのことを理解しようとしてくれているか」に関心があります。
ここで鍵となるのが、「アクティブ・リスニング(傾聴)」です。これは、単に黙って聞くことではなく、相手の言葉だけでなく、非言語的なサイン(表情、声のトーン、姿勢)にも注意を払い、理解しようと努めるコミュニケーション技術です。
心理学の研究では、リーダーがアクティブ・リスニングを行うことで、メンバーの自己効力感と仕事への満足度が向上することが示されています。
【実践!効果的な1on1のための3つの質問】
アクティブ・リスニングを促す優れたフレームワークは例として以下になります。
- 何がうまくいっているのか? (チームの成功体験と強みの特定)
- 何が問題なのか? (ボトルネックと改善点の特定)
- あなたが仕事で成功するために、私に何をしてほしいか? (リーダーへの期待と支援ニーズの把握)
これらの質問を事前に伝え、メンバーに考える時間を与えることで、より深く、本質的な対話が可能になります。そして、リーダーはメモを取り、真剣に受け止める姿勢を示すことが、信頼性の構築に繋がります。
2-2. 心理的安全性の醸成:Googleの事例から学ぶ
Googleが実施した「プロジェクト・アリストテレス」という大規模な調査では、「心理的安全性」こそが、最も生産性の高いチームに共通する唯一の要因であると結論づけられました。心理的安全性とは、「チームの中で、自分の意見や懸念を表明しても、罰せられたり、恥をかかされたりしないと確信できる状態」を指します。
新しいリーダーは、以下の行動を通じて、意図的に心理的安全性を高める必要があります。
- ミスを許容する文化の構築: リーダー自身が失敗を認め、それを学習の機会として捉える姿勢を示す。「失敗は成功のもと」という言葉を単なるスローガンではなく、行動で示しましょう。
- 質問を奨励する: 「質問は歓迎する」「わからないことは恥ではない」というメッセージを繰り返し発信し、メンバーが自由に疑問を呈せる環境を作ります。
- 対立を建設的に扱う: 意見の対立を避けず、それをチームの成長のための「建設的な摩擦」として捉え、異なる視点を尊重するプロセスを確立します。
【事例:心理的安全性を高めた企業の取り組み】
あるIT企業では、離職率の高さが課題でした。新任リーダーは、心理的安全性を高めるために「みんなの100日プロジェクト」を発足。これは、チームメンバー全員が、会社をより良くするためのアイデアを自由に提案し、実行に移すというものです。この取り組みにより、メンバーの主体性が向上し、結果として離職率が大幅に低下しました。
3. チームの「型」を確立する:プロセスとコミュニケーション戦略

信頼関係が築けたら、次はチームが効率的かつ効果的に機能するための「型」、すなわちプロセスとコミュニケーションのルールを確立します。
3-1. 仕事を進める手順の確立:会議体の見直し
現状の会議体が効果的かどうかを確認することは重要です。
- 現状の把握: 定期的な進捗確認会議やオペレーション会議が開催されているかを確認し、同席して話を聞きます。
- リーダーシップの移行: 前任者が運営していた会議は、メンバーにリーダーを交代させることを検討します。これは、メンバーのオーナーシップを高め、リーダーがマイクロマネジメントに陥るのを防ぐ効果があります。
- 調整と改善: チームが危機的な状況でなければ、すぐに大きな変更を加えるのは避け、メンバーの意見を聞きながら、徐々に会議の目的、参加者、アジェンダを調整し、「効果的な会議」へと進化させます。
3-2. コミュニケーションの手段と頻度:柔軟な対応
コミュニケーションは、チームの生命線です。新しいリーダーは、「どの程度の関与を望んでいるか」を明確に伝える必要があります。
- リーダーのスタイルを伝える: 「私は毎日進捗を共有してほしい」「緊急時はチャットで、それ以外はメールで」など、あなたのコミュニケーションの好みと期待値を明確に伝えます。
- メンバーのニーズに合わせる: メンバーの中には、頻繁な連絡を好む人もいれば、自律性を重んじる人もいます。一律のルールを押し付けるのではなく、1on1で把握した個々のニーズに合わせて、柔軟なコミュニケーション戦略を採用しましょう。
- 透明性の確保: 重要な決定事項や会社の情報は、可能な限り透明性をもって共有します。透明性は、不確実性を減らし、メンバーのエンゲージメントを高める効果があります。
3-3. 目標設定の早期化:最初の30〜45日間で完了させる
チームが危機的な状況にある場合はもちろん、そうでない場合でも、最初の30〜45日間で、チームおよび個人の目標を更新し、共有することが極めて重要です。
目標設定は、チームのエネルギーを一つの方向に向ける「羅針盤」の役割を果たします。
- SMART原則の活用: 目標は、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)の原則に基づいて設定します。
- メンバーの巻き込み: 目標設定のプロセスにメンバーを巻き込むことで、目標に対するコミットメントと納得感を高めることができます。
4. 科学的リーダーシップ:状況に応じたスタイルの使い分け

リーダーシップには、唯一の「正解」はありません。新しいリーダーは、チームの状況やメンバーの成熟度に応じて、自身のスタイルを柔軟に変化させる必要があります。これが、シチュエーショナル・リーダーシップ理論(SL理論)の核心です。
4-1. SL理論に基づく4つのリーダーシップスタイル
SL理論では、メンバーの「成熟度(課題達成能力と意欲)」に応じて、リーダーの行動を「指示的行動」と「援助的行動」の2軸で分類し、以下の4つのスタイルを使い分けることを推奨します。
| スタイル | 成熟度 | 行動 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| S1:教示型(Telling) | 低(能力も意欲も低い) | 高い指示、低い援助 | 具体的な指示と監視。新任者や未経験者向け。 |
| S2:説得型(Selling) | 中(能力は低いが意欲は高い) | 高い指示、高い援助 | 理由を説明し、質問に答える。動機付けが必要なメンバー向け。 |
| S3:参加型(Participating) | 中(能力は高いが意欲は低い) | 低い指示、高い援助 | 意思決定にメンバーを巻き込み、自信を回復させる。ベテランだがモチベーションが低下しているメンバー向け。 |
| S4:委任型(Delegating) | 高(能力も意欲も高い) | 低い指示、低い援助 | 権限を委譲し、結果のみを求める。自律性の高いプロフェッショナル向け。 |
新しいリーダーは、1on1や日々の観察を通じて、各メンバーがどの成熟度にあるかを判断し、適切なスタイルで接することが、メンバーの成長とチームの生産性を最大化する鍵となります。
4-2. 民主型リーダーシップの有効性
心理学者クルト・レヴィン氏の研究では、リーダーシップスタイルがチームに与える影響が調査されました。その結果、民主型リーダーシップ(メンバーの意見を尊重し、意思決定に巻き込むスタイル)が、メンバーの満足度とパフォーマンスを最も向上させることが示されています。
新しいリーダーは、就任直後の「学習と吸収」フェーズにおいて、特に民主型のアプローチを意識し、メンバーの意見を積極的に取り入れる姿勢を示すことが、チームの協力を得るための最良の戦略となります。
5. 成長を加速させる「観察と質問」の技術

新しいリーダーが陥りがちな罠の一つに、「すぐにすべてを解決しようとする」衝動があります。しかし、最初のうちは「批判することなく観察し、疑問点は質問することで解消していく」のが最良の方法です。
5-1. 観察者としての視点を持つ
就任直後のあなたは、チームにとっての「外部の目」という貴重な視点を持っています。この視点を最大限に活用しましょう。
- プロセスの非効率性: 「なぜこの会議はいつも長引くのだろう?」「この承認プロセスは本当に必要なのか?」といった、チームメンバーが慣れてしまって見過ごしている非効率なプロセスを客観的に観察します。
- チームの相互作用: 誰が誰に影響を与えているか、非公式なリーダーは誰か、コミュニケーションのボトルネックはどこにあるかなど、チーム内の人間関係や力学を注意深く観察します。
5-2. 批判ではなく「問い」を投げかける
観察で見つけた課題に対して、すぐに「これは間違っている」と批判するのではなく、「なぜそうなっているのか?」という問いを投げかけます。
- 例: 「このレポート作成に時間がかかりすぎている」と批判する代わりに、「このレポートは、どのような目的で、誰のために、どのような情報を提供しているのでしょうか?」「このプロセスを短縮するために、私たちができることは何でしょうか?」と質問します。
この「質問によるアプローチ」は、メンバーに自己反省と改善への主体性を促し、リーダーが一方的に解決策を押し付けるよりも、持続的な改善を生み出す力があります。
6. 【実践ロードマップ】新しいリーダーのための最初の90日間チェックリスト

これまでの内容を統合し、新しいリーダーが最初の90日間で実践すべき具体的な行動を、チェックリスト形式でまとめます。
| フェーズ | 期間(目安) | チェックリスト |
|---|---|---|
| フェーズ1:学習と吸収 | 最初の30日間 | ✅ 上司・ステークホルダーとの期待値調整ミーティングを実施したか? |
| ✅ チームメンバー全員と1on1ミーティング(3つの質問を活用)を実施したか? | ||
| ✅ チームの主要なデータ(KPI、過去のプロジェクト実績)を分析したか? | ||
| ✅ チームの非公式なリーダーや影響力のある人物を特定したか? | ||
| ✅ 自分のコミュニケーションスタイルと期待値をメンバーに伝えたか? | ||
| フェーズ2:戦略の策定と共有 | 31日目〜60日目 | ✅ チームの新しいビジョンと目標(SMART原則)を策定し、メンバーと共有したか? |
| ✅ チームの目標設定プロセスにメンバーを巻き込んだか? | ||
| ✅ チームの強みを活かした「初期の成功体験」を意図的に創出したか? | ||
| ✅ 心理的安全性を高めるための具体的な行動(例:失敗の共有)を実践したか? | ||
| ✅ メンバーの成熟度に基づき、個別のリーダーシップスタイル(SL理論)を適用し始めたか? | ||
| フェーズ3:実行と定着 | 61日目〜90日目 | ✅ チームの非効率なプロセスに対する改善策を、メンバーの意見を基に実行に移したか? |
| ✅ 定期的なフィードバックサイクル(例:週次の進捗確認)を定着させたか? | ||
| ✅ チームのコミュニケーションルール(例:緊急時の連絡手段)を文書化し、共有したか? | ||
| ✅ 最初の90日間の成果と課題を上司に報告し、次の90日間の計画を共有したか? |
まとめ:成功への第一歩は「人間関係の構築」から

新しいチームのリーダーとしての成功は、人間関係の構築と協調性にかかっています。
まずはチームメンバーへの質問を通じて、人材、業務、そしてチームが持つ潜在的な機会について深く理解を深めてください。成功のためには、チーム全員の協力が不可欠であり、そのためには、まずメンバー一人ひとりが「自分はチームにとって貴重な存在である」と感じられる環境を作ることが重要です。
最初のうちは、性急な批判や大きな変更を避け、観察と質問に徹しましょう。その過程で得られた情報と、メンバーとの間に築かれた信頼性こそが、あなたがチームを次のレベルへと導くための、最も強力な武器となります。
あなたの新しいリーダーシップの旅が、素晴らしい成功に満ちたものとなるよう、心から応援しています!🚀✨


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