ビジネスにおいて、交渉にも様々なタイプがあり、何を目指してどのように進めるのかも、その時々によります。
たとえば、取引先との商談、資本提携における条件の交渉など。
ビジネスにおける交渉を成功させるためには、交渉は共同で進めるのであって、敵対するものではありません。
まずは交渉の基礎について解説します。
ビジネスにおける交渉の基本
お互いにWin-Winの成果を出すこと、このためには多面的に交渉をすることが大切です。
理解していても、いざ交渉の場になると疎かになりがちですので、注意しましょう。
取引先との交渉は勝敗を決めるものではない
取引先との交渉は、勝つか負けるかのゼロサムゲームではありません。
ゼロサムゲームとは、予め全体量が決まっており、それを巡って取り合う状況のことで、当事者間での取り合いで、相手対自分の争いになります。
一方、全体量が確定しているゼロサムゲームに対して、全体量を大きくできる状況のことをプラスサムゲームと言い、両者協力して全体量を最大にすることを狙うのが最善です。
相手を負かして自分が勝つという意識ではなく、相手と協力しながら、お互いにとって最も良い結果を出すことを目指しましょう。
交渉相手とは協力関係を結ぶ
ビジネスにおける交渉は、勝負すると考えないようにしましょう。
お互いに満足できるような、最良の選択ができるように、協力して話し合う姿勢が大切です。
ただし、交渉にも色々なシーンがあり、必ずしも協力関係が成り立つわけではありません。
相手が協力してくれない場合には、まず説得することが必要で、敵対姿勢をとられても、自分も同調しないようにしましょう。
関係者にとってWin-Winの交渉を目指す
Win-Winとは、お互いに満足できる状態のことです。
相手はなぜそうしたいのか、お互いに妥協できる点はないか、様々な角度から粘り強く話し合って、お互いに良い結論にしましょう。
Win-Winに対して、片方だけ得になり、もう一方が損をするケースをWin-Loseと言います。
ビジネス交渉でWin-Loseになると、短期的には良くても、長期的には顧客や信用を失ってしまうので、必ずしも良い結果に終わるわけではありません。
そして、交渉で最悪の結果は、Lose-Loseとなることです。
感情的になり、我を通して意味のない部分に固執したりすると、お互いに満足のいかない結果になってしまいがちですので、注意しましょう。
ビジネス交渉では相手の感情を考慮して抑える
あらゆるビジネスの交渉では、くれぐれも感情的にならないようにしましょう。
話し合うときには、相手の感情面にも十分に配慮することです。
もし感情的になっているようであれば、その感情を静めるように努力しましょう。
相手が感情的になっているとき、それにつけこんで交渉しないように気をつけましょう。。
その場では有利になったとしても、取引先との間に禍根を残すことになってしまいます。
交渉においては、条件としては納得できても、プライドや意地が邪魔をして合意しないこともあるものです。
交渉相手の感情やメンタルも配慮しながら、相手が納得しやすい言い方をすることが大切です。
交渉の事前準備として土台を作る
交渉する前にいくつか準備しておくことがあります。
まずは相手とのコミュニケーションの土台を作ることです。
同時に、相手からの信頼を得るようにしましょう。
交渉を思い通りの結果を出すためには、事前準備が必要です。
交渉相手と親しくなることで交渉の土台を作る
ビジネスの交渉は、両者にとってWin-Winの最適な結論を探す共同作業となります。
当事者の間に良好な人間関係ができていると、交渉をスムーズに進めることができます。
交渉に臨むときには、コミュニケーションの土台作りから取り組みましょう。
ただし、親しくなるというのは、個人的な友人として仲良くなるのではありません。
同じビジネスパーソンとして、お互いに尊重し合い、好感をもって対話できる関係を作るようにすることが大切です。
お互いに信頼し合い、心を開いて語り合える関係ができている状態のことを、心理学ではラポールといいます。
ビジネス交渉相手とラポールが築ける関係を作りましょう。
交渉相手と良い人間関係を築く
交渉相手との関係が悪いと交渉の成功は望めません。
まずは自分から心を開いて好意を示し、積極的に相手との関係を作っていきましょう。
また、その分野に精通していて、十分な知識や経験があることを伝えることで、相手の信頼を得ることも大切です。
他にも、必要な権限を持っている、合理的な思考ができる、理不尽なことはしない、など信頼を得られるように相手に伝えることが大切です。
専門分野の信頼を得る
自分の専門性を信じて任せて欲しいときには、自信をもって、論理的に相手に伝えましょう。
ただし、むやみに専門用語を多用しても、相手に伝わりませんので注意が必要です。
相手と知識レベルに差があり、一任して欲しい状況であっても、わかりやすく説明して納得した上で任せてもらえるようにします。
相手も専門家であれば、共通用語として専門用語を使うのは有効な手段です。
交渉相手に信頼されることが重要
ビジネスの交渉では、信頼されることが必要です。
自分にスキルがあればいいのですが、スキルがないときは、対象の専門分野に通じた担当に同行してもらったり、データや実績を見せて説得力を増すなど、対応を工夫しましょう。
交渉の場に、専門性をカバーする目的で担当者が同席する場合、お互いの役割分担を明確にしておきましょう。
あいまいなまま交渉に臨むと、お互いにやりにくくなる可能性があるので注意してください。
ビジネス交渉における状況の把握
交渉においてよい結果を得るためには、しっかりとした準備が必要です。
準備をしておくことで、交渉の場で困ることが少なくなりますので、自分が思い描くような成果を出すことができるようになるのです。
交渉の前に内容を整理しておく
ビジネスの交渉するときに、何も考えずに無計画に交渉に臨んでは失敗してしまいます。
どのような条件を出すか、その優先順位はどうするか、どこまでであれば譲歩できるか、といったことは、事前に整理して考えておきましょう。
交渉の状況によって、事前に整理した内容をそのまま全てをさらけ出す必要はなく、臨機応変に対応しましょう。
必要に応じて上司に相談しながら内容を決めることが大切です。
価格交渉における限度額はギリギリのラインを想定する
価格交渉をするときは、譲れるギリギリの最低金額を決めておきましょう。
許容できる限界の金額を前もって決めておくのです。
実際にそうなっては困るほど最低金額を下げる意味がないのですが、逆に、余裕を見すぎてもいけません。
状況によっては、不利になる可能性もあるので注意しましょう。
必ず優先順位を決めておく
条件がいくつかある場合、全てそのまま通したいものですが、むやみに押すばかりでは交渉になりません。
一般的には、何かを通せば、他の部分では譲ることが必要となります。
優先順位を決めることや、希望する組み合わせを考えておくなど、目処を立てておくようにしましょう。
実際に交渉が始まると、必ずしも決めた優先順位通りに条件を出せるわけではありません。
手にも優先度の異なる条件があれば、それぞれ要望を出してすり合わせることになります。
交渉のシナリオを考えて準備する
相手があっての交渉ですので、どのように交渉が進むかは始めてみるまでわからないものです。
うまくいったパターンからダメだった交渉まで様々なシナリオをイメージしながら、それぞれどのように対処するか、考えておきましょう。
このとき、最悪のシナリオを考えて心配ばかりしていても意味がありません。
どのようなリスクがあるか考え、そうなったらどう乗り切るか、対処法を準備しておくことが大切です。
交渉の進め方と合意形成について
交渉の準備万端でも、交渉の場でいきなり相手を説得しないようにしましょう。
まずは相手の話を聞いて、状況を把握します。
そして、お互いの条件を整理することで、論点を絞り、交渉を有利に進めていきましょう。
相手の話は反論や同意せずに共感を示すようにする
いきなり条件交渉に入るのではなく、まずは相手の話を聞きましょう。
ここでは賛成も反対もせず、理解と共感を示しながら、じっくり聞くことが大切です。
まずは相手の言い分を理解し、判断は後回しで、そのまま受け止めましょう。
知りたいことを聞き出すのではなく、相手が言いたいことを受け止めることに注力することで、相手と信頼関係が生まれ、その後の交渉がスムーズに進みます。
真意がわからないときは遠慮せずに尋ねる
何を望んでいるのか、どのような意味で言っているのか、わからないときには、率直に聞いてみましょう。
よく話を聞いてみれば、別の解決策がみつかるのです。
相手の気持ちを逆なでしないように、率直で真摯な姿勢をもって尋ねることが大切です。
交渉相手の素性を把握しておく
取引先との交渉であれば、相手の会社が何を望んでいるのかは、きちんと理解しておきましょう。
同時に、直接の交渉相手である担当者についても、どのような権限があって、どうすれば満足するか、把握しておくことが大切です。
例えば相手に決定権がない場合は、その相手が上司に説明しやすいように、説得材料をわかりやすい形で渡してあげるようにしましょう。
相手の組織における位置付けや権限によって、交渉の進め方が変わってきます。
あまり権限委譲されていない場合、組織と担当本人とでは、何をどうしたいのかに差異があるので注意しましょう。
合意している内容をまとめる
解決策を探るには、交渉する項目を絞ることが大切です。
既に合意できている項目と合意できていない項目がわかるようにして、問題となる内容を抽出しましょう。
このとき、項目を書き出していくと、内容の整理ができるので合理的な交渉ができるようになります。
一般的に、共有できる部分が多い相手には好意を持ちやすいので、よい関係を作りやすくなります。
合意した内容を共有する
合意できる点が見つかったら、そのことを相手と共有しましょう。
相手と共有することで当事者間での論点がずれないようにできますし、お互いに良い関係作りができます。
お互いの問題点がずれると、交渉がうまく進まない要因となりますので、問題を明確に絞り込み、共有することが大切です。
合意点を箇条書きにして書き出してみることは、相手と共有できる効果もあるので、PCやタブレットの画面、ホワイトボードなど、お互いに見えるものを活用すると効果的です。
おわりに
ビジネスにおける交渉の土台作りについて説明をしてきました。
準備や交渉の進め方など、面倒だと思われるかもしれませんが、交渉を成功させるための第一歩になります。
実際のビジネスの場でも試してみてください。
コメント